ORDERMADE 事例紹介
装置製作・受託計測の引き合いから納品までの流れについて事例を紹介いたします。
装置製作事例
某社様研究室向け簡易低騒音風洞装置
某社様研究室向け簡易低騒音風洞装置
概要
装置製作においては、仕様の確定までが一つの山場となります。
一般的に機械の設計においては一つの仕様を変更すれば、他の仕様に影響を与えます。たとえば風洞の場合、風速を変更すると装置のサイズと重量、必要電力、騒音など、様々な項目が影響を受けます。
クライアントのご要望を可能な限り聞き取ること、また必要となればそのご要望に優先順位を付けていくことも重要になります。
クライアントが本当に欲するものは何か。
それを知ることが仕様確定に向けた最も重要な要素です。
本装置は簡易的な騒音試験を行うための風洞であり、様々なご要求仕様と制約条件から最適仕様を探る協議に時間を要しました。
装置製作の流れ
1.ご要求仕様の確認
新規クライアントから「気流音のテスト環境を必要としている。本格的な低騒音風洞でなく可能な限り騒音を抑えた風洞を計画してもらえないか」というお問い合わせメールをいただき、翌日、Web会議でご要求仕様を確認させていただきました。
①風速は15m/secまで出したい。
②騒音は40dB(A)以下に抑えてほしい。
③測定部の寸法は□500mmくらいほしい。
④設置場所はオフィスビルの3Fで設置スペースは幅2m、長さ10m、高さ3m。
⑤予算は500万円くらい。
2.1次見積もりと擦り合わせ
ご要求仕様に対して見積作業を行いました。本件の1次見積もり作成にはおよそ2週間を要しました。
風洞の設計は風速及び気流性能と測定部寸法から概略構成が決まります。出来上がった構成を元に動力計算を行い、最適な送風機を選定します。選定された送風機を元に全体を再設計し直します。
また大型の装置の場合、工場からの輸送・搬入費や据え付け場所での組立工事費も大きくなるため、2週間の見積もり作業中、数度に渡ってメールやWeb会議を通じて必要事項を確認させていただきました。
検討の結果、①から③のご要求仕様を満たすには④と⑤の制約条件がネックとなるため、クライアントのご了承を得て、1次見積は④、⑤を除外するという前提付きで作成しました。
3.クライアントが本当に欲するものを形にする
たとえば部品設計に強度的マージンがあるするように、クライアントの要望にはしばしば+αが含まれ、それがより重要な仕様の達成を阻害することがあります。したがって重要度の低い+αを可能な限り削ぎ落すことでクライアントが本当に望む形に近づくことが出来ます。
この装置では最初の御見積提出後、約4カ月間に7度の仕様改訂を行い、最終的な要求仕様を確定しました。
①風速は10m/sec以上。目標は15m/sec。
②騒音は45dB(A)以下。目標は40dB(A)。①、③より優先。
③測定部の寸法は□350mm以上。目標は500mm。①より優先。
④設置場所は変更できないので、設置スペースは『must』。
⑤予算は1000万円を上限として可能な限りコストダウンを図る。
4.受注後も最適仕様を目指す
仕様確定後、クライアント社内の調整を経てご発注に至りました。
ご発注前に工程の擦り合わせが終わっており、製作期間は設計を含め5ヵ月と決まっています。工場での製作品と電気部品のような購入品のリードタイムから逆算し、設計検討に最大限の時間を当て、可能な限り必達仕様から目標仕様に近づけるよう検討を重ねました。
またパーツ設計においては必要に応じて3Dプリンタで試作・確認を行いました。
現地搬入の1ヵ月前に全てのパーツが揃い、アセンブリー、工場試運転・性能確認を実施。
工程通りに現地搬入して性能確認後お引き渡しとなりました。
受託計測事例
ヘアドライヤーの風量・風速計測
ヘアドライヤーの風量・風速計測
概要
弊社では、計量トレーサビリティのとれた機器を使用し、風速や風量、圧力の受託計測を承っています。送風機やファン、及び空気清浄機やヘアドライヤーといったアッセンブリー品にも対応しており、スピーディな製品開発現場で活用していただいております。受託計測では、装置製作で培ってきた流体計測の経験を活かし、測定方法のご提案をしています。クライアントの真の目的を第一に考え、差圧測定をベースとした風速・風量計測で「信頼性のある計測」を行います。
本事例では、試験体の事前測定を行い、より適した測定方法をご提案しました。
装置製作の流れ
1.計測内容の検討・見積もり
ヘアドライヤーの風量を測定したいというクライアントのご要望のもと、測定方法を検討しました。
通常、吸い込み風量=吐き出し風量と考えられますが、ヘアドライヤーは周囲の空気を巻き込みながら風が流れるため、実際の使用環境における風量(人が受ける風量)は、より大きくなる傾向があります。
そのため、測定方法によっては算出される風量が異なってしまうという懸念があります。
本事例では、より使用環境に近い風量を測定するため、吹き出し口からある程度離れた断面において風速を測定し、その風速分布から体積風量を算出することとしました。
2.計測
先端に熱電対を取り付けたピトー管をトラバース装置で移動させ、測定範囲内の21×21点で、ピトー管差圧・温度の分布計測を行いました。
その測定値より、その点における風速、空気密度を算出し、面積をかけることで体積流量としました。ヘアドライヤーの運転モード・付属品の有無等、ご要望に応じて複数パターンでの計測を行いました。
また、クライアントにご来社いただき、計測の様子を確認していただきました。
3.成績書の発行(納品)
計測結果を確認していただき、その後、改良品の計測も同様に行いました。
計測結果について検査成績書を発行し、それをもって納品といたしました。弊社の風速計測システム(ピトー管)は、国家計量標準とのトレーサビリティがとれており、測定値の信頼性アップにつながりました。